金沢観光は、履き慣れたスニーカーを履いて入り組んだ路地を歩きまわろう!

藤橋 由希子


金沢の道は狭くてカギ字に曲がって入り組んだ道が多いのが特徴。だから不慣れな観光客は目的地にたどり着くのも一苦労。一方通行の逆走や、細い路地で立ち往生している県外ナンバーの車をよく見かけます。こんな思いをされた方は、さぞや金沢嫌いになっている事でしょう。ですがちょっと待ってください。そんなあなたこそ金沢の本当の魅力に触れていただけたのですから。ただ一つ残念だったのが、車だったという事だけ。

細く入り組んだ迷路のような道


Photography by Ichigami

金沢の入り組んだ道を歩けば、広大な領地を如何にして守り抜いてきたかが街を歩けば分かります。金沢の街は敵が容易に攻め込めないように作られた街です。京都のような碁盤の目のような道では、万一敵が攻めてきた場合、簡単に城までたどり着けてしまいます。金沢は、わざと細く入り組んで迷路のような道にすることで、城を守る役割を持っていました。さらにその道沿いには、まるで一枚の壁のように繋がった町家が立ち並んでいます。これも文字どおり城壁のような役割を持っていました。町家は共通した特徴があるので、きっと当時の城下は巨大な迷路都市のようだったのではないでしょうか。

金沢は戦災を免れた街ですから、当時を思い起こさせてくれる街並みがあちこちに残っています。さらに街の核であった金沢城は、建物の至る所に菱形が採用されています。城を見渡すことのできる方角に向かって、菱形の広い角の部分が見えるように建てられているのです。こうする事で、城は実物以上に大きく見えます。ずっしりと重厚な造りの大きな城を見て、敵はなんと攻め落としにくい城だと戦意を無くしたかもしれません。

金沢に流れる二本の川


Photography by Ichigami

金沢城の両側には浅野川と犀川という二本の川が流れています。ここにも敢えて橋をほとんど架けず、大変不便な交通事情を作っていました。これも敵の侵入を防ぐための策。さらに金沢に残る3箇所の寺院群(寺が密集したエリア)は、不穏分子を匿いやすい寺を監視しやすくするためにわざと移築させて作ったエリアです。

これほどまでに強固な守りは裏を返せば、外にも出にくいという事で、代々前田家は不戦の誓いを貫いたとも言えるわけで、その証が金沢の街並みであると言えるのではないでしょうか。

町家が建ち並ぶ城下町が最も恐れていたもの

さて、道が狭くぎゅうぎゅう詰に町家が建ち並ぶ城下町が最も恐れていたもの。それは敵襲ではなく火災でした。一度火の手が上がれば、消火活動のしにくい町は一気に炎に包まれてしまいます。もちろんここにもきちんと備えがあるのが金沢の町。町中にまるで毛細血管のように用水が張り巡らされていました。今もその名残として、辰巳、大野庄、鞍月用水が町中を流れていますし、その他にも二重のお堀がありました。もうこれは日本のベニスとしか言いようがありませんね!

ここまで書くと金沢の町を歩いてみたくなりませんか?(なって欲しい!)

金沢は四季を通じて色々な表情が楽しめる街



さらに素敵な季節の風物詩もご紹介しましょう。

まず春は桜!金沢は町の至る所に桜の木があり、お花見しながら散策が楽しめます。桜のシーズンが終わるとそろそろ出てくるのが「ツバメ」。ツバメは昔から人と共生してきた鳥です。町家には軒先や土間といったツバメの巣作りに最適な環境があり、そこに巣を作る事で、カラスやトンビとといった天敵から雛を守る事ができました。人間にとってもツバメは害虫を食べてくれるので、お互いに必要な関係があったわけです。金沢には町家が多く残っているので、ツバメの巣もたくさんあります。市内小学校では毎年「ツバメ調査」を行って、巣や雛の数を小学生が調査しています。春から初夏にかけては、親鳥がせっせと雛に餌を運ぶ姿や可愛らしい雛の鳴き声が耳に入ってきて、癒される町歩きが楽しめます。

夏の町歩きは大変ですね。金沢は湿度の高いジメジメした夏ですから、体調を見ながらほどほどに楽しんでいただきたいです。

秋は紅葉ですね。春の桜だけでなく、金沢の町は緑がいっぱいです。紅葉した木々の中を歩くのはなんともロマンチック。兼六園から本多の森公園のイチョウ並木をそぞろ歩くのがオススメです。



冬になると街路樹や民家の庭でも、兼六園同様雪吊りが見られます。庭師の技術の高さがうかがい知れる美しい雪吊りを楽しんでください。土塀のあるお家(武士の家系の家が多いです)では、寒さから起こる土塀のひび割れを防ぐために「こも」がかけられています。これも冬場の風物詩。雪や寒さから建物や庭木を守る工夫を感じる散策が楽しめます。

まとめ

このように金沢は四季を通じて色々な表情が楽しめる街です。

さあ、車を停めて履き慣れたスニーカーで金沢の町に飛び込んでください。お殿様の策略にまんまとハマって迷いながらの散策は、きっとあなただけのとっておきに巡り会える事でしょう。


最近の投稿