金沢の冬支度(雪吊り情報)
藤橋 由希子
晩秋の風物詩【冬支度】
金沢は四季折々の魅力が味わえる街です。
そして魅力の種類は本当に様々!景観、文化、風習(生活)、食…それぞれに季節の移ろいを感じます。
そんな中から今回は秋をさらに細分化!「晩秋」の魅力をお伝えします。
秋の観光シーズンがひと段落した今だからこその魅力が金沢にはあるんですよ。
今日はそんな魅力の中から景観+文化+生活コンテンツが融合した「雪吊り」と「こもかけ」をご紹介します。
雪吊りやこもかけは金沢の冬の風物詩として知られています。確かに冬の見どころではありますが、お勧めしたいのがちょうどこの時期。
つまり冬支度の作業光景なんです。
雪吊りとは?
そもそも雪吊りとは何かということですが、写真の通り木の枝に縄を渡してあるもののことを言います。
これは何のためにしているかというと、雪の重みで木の枝が折れてしまうのを防ぐための対策で、庭師が行う作業です。
藩政時代の金沢は侍と商人の多い町で、立派な家が沢山ありました。立派な家の代名詞と言えるのが庭とも言えますが、戦災を免れた金沢には今も立派なお庭のあるおうちが多いです。私たち金沢市民は通りを歩いている時、ガーデニングできれいな花が咲いているお庭より、手入れされた庭木を見る機会が多く、観光客にとってもそんな町並みに「金沢らしさ」を感じのだと思います。
おまけに金沢は庭木のみならず、公園や広場、街路樹がいっぱいの緑の多い町でもあります。
そんな街ですから、景観維持のためには当然沢山の庭師が必要ですし、高い技術も求められます。
毎年11月1日から金沢では木々の冬支度として雪吊り作業が始まるのです。
毎年雪吊りがかかる木のトップバッターはやはりこの木から!
兼六園にある「唐崎の松」(写真)です。
聞くところによると、松の木は「水を嫌う」そうで、本来水辺には枝を伸ばすことはないそうです。ですが写真をご覧ください。
この松の枝は瓢池の水面ギリギリに所でまっすぐ枝を伸ばしています。
このような美しい枝ぶりを作るのも庭師の技術。
とても誇らしく思います。
唐崎の松を皮切りに、兼六園では約1か月かけて、園内の木々の雪吊りを行います。この時期の兼六園の主役は庭師さんだと思いますよ。
そんな美しい雪吊りが更に美しく見えるのがライトアップ。
兼六園では、11月9日から12月1日までの期間開園時間を21時まで延長され、夜はライトアップが楽しめます。
幻想的な名園をぜひお楽しみください。
もちろんしっかり防寒対策してくださいね!
金沢らしさを守る「こも」
金沢らしい町並みと言えば、やはり「土塀」が上がると思います。藩政時代から続く古いお宅、特に侍の家には土塀がつきものでした。土塀の高さや屋根の材質などでそのお家のお侍さんの力加減が分かるとも言われていました。
そんな大切な土塀を冬の寒さから守って食えるのが「こも」でした。
雨がちな冬の金沢で、土塀に染み込んだ雨は冬の寒さで凍ってしまいます。水は氷ると膨張しますから、それが原因で土塀が割れてしまうんです。それを防ぐために土塀の表面に掛けるムシロを「こも」と言い、この「こも」を掛ける作業が気軽に見られるのが毎年11月3日です。
こちらのトップバッターは観光スポットでもある「長町武家屋敷跡」(写真)。
その名の通りかつての侍(中級下級藩士)の邸宅が土塀を中心に残されている保存地区です。この地区にこもがかけられると、市内あちこちに点在する土塀でも冬支度がスタートします。
まとめ
いかがでしたか?晩秋の金沢の中から今回は「雪吊り」と「こも掛け」をご紹介しました。
どちらも金沢の気候風土が生んだ生活の知恵と職人の技ですが、今もなお続くこの風習はもはや金沢の文化と呼べるのではないでしょうか。
今回も金沢愛満載でお伝えしましたが、是非晩秋の金沢ではいつもと違う視点で町並み散策をお楽しみください。